【F1イタリアGPレビュー】 白熱のメルセデスVSフェラーリ

 なまり色の雲に覆われたモンツァに、ティフォシたちの熱狂と絶叫が響いた――。

 今シーズンもいよいよ佳境の第14戦、イタリアGP。注目は激しさを増すメルセデスフェラーリのタイトル争いだ。

 圧倒的なPU(パワーユニット)の性能を武器に、2014年以降4連覇を続けているメルセデス。今シーズンに入り、その独走に待ったをかけたのがフェラーリである。開幕戦オーストラリアGPで勝利を収めたフェラーリはシーズン中もアップデートを続け、徐々にメルセデスとの性能差を縮めていった。
 性能差の逆転が決定的になったのが、スパ・フランコルシャンで行われた前戦、ベルギーGPだ。アクセル全開率が75%を超えるこの高速サーキットでフェラーリは勝利を収め、もはや性能面でメルセデスに優位性は存在しないことを実証したのだった。
 そして今回、イタリアGPが行われるモンツァ・サーキットはスパをも上回る超高速コースだ。さらにいえば、このコースはフェラーリのホームコース。スタンドは“ティフォシ”と呼ばれる熱狂的なフェラーリファンたちで赤一色に染め上げられ、まさに負けられない戦いである。

 

 決勝当日、モンツァはどんよりとした曇り空に覆われていたが、対照的にコースの雰囲気は明るかった。前日の予選で、フェラーリメルセデスを打ち破り、実に18年ぶりにこのコースで最前列を独占したのだ。
 特に一番手を獲得したライコネンは前年のモナコGP以来のポール獲得となる。長年フェラーリで活躍してきた現役最年長ドライバーである彼の活躍に、ファンの熱気は最高潮に達していた。
 決勝のスタート隊列は、一番手がフェラーリキミ・ライコネン。二番手が同じくフェラーリセバスチャン・ベッテル。続いて三番手、四番手にメルセデスルイス・ハミルトンバルテリ・ボッタスが並ぶ。

 

 現地時間15時10分、決勝がスタートした。
 1周目、ロッジアシケイン。はやくもレースが動く。
 二番手のベッテルが、コーナー進入でイン側へ走行ラインをふった。前を走るキミが少しでも隙を見せれば、いつでも抜けるというアピールだ。たとえチームメイトが相手でも、容赦はしない――。アグレッシブさをむき出しにした、まさき気迫のドライブだ。
 しかし、その気迫は裏目に出ることとなる。
 ベッテルの外側の空いたスペースに、三番手のハミルトンがマシンを滑り込ませた。それも、考えられない鋭さでだ。レース開始直後で、タイヤは温まっておらず、マシンも重い。通常であれば、止まりきれない。しかし、現役随一のブレーキ巧者であるハミルトンによって、シルバーのメルセデスは魔法のように速度を落としていく。タイヤが白煙を上げることもなく、ついにマシンはターンインを開始した。
 イン側のベッテルもまた、譲らない。ハミルトンより半車身遅れてコーナーへと飛び込んでいく。だが、このコーナーに二台が並んで抜けられるスペースはなかった。
 結果、両者は接触。旋回安定期に入っていたハミルトンはそのままコーナーを駆け抜けたが、ベッテルはスピン。最後尾まで順位を落とし、このレースでの勝負権を失うことになってしまった。


 この結果、一番手キミ・ライコネン、二番手がルイス・ハミルトンとなり、レースはこの二人の一騎打ちの様相を呈していく。
 セーフティーカーの出動を挟んで4周目のホームストレート、自慢のマシンパワーでハミルトンがライコネンの前に出ると、ライコネンも負けじと4コーナーで抜き返す。そのあとも車間1秒以内、ラップタイムも0.1~0.2秒差の超接近戦が続いた。

 

 20周目、にわかにピットが騒がしくなる。メルセデスがピットインの準備を始めたのだ。レース前、タイヤサプライヤーピレリが予想したタイヤのライフが24周だったので、かなり早いタイミングのピットインとなる。アンダーカットである――!

 アンダーカットとは、競争相手よりはやくピットインをすることによって、レース展開を有利にするレース戦略だ。タイヤの消耗によるレースペースの低下があと数周のうちに始まると予想されるとき、あらかじめタイヤを交換しておく。こうすることで、ライバルが消耗したタイヤで走っている最中に自分は新品のタイヤでタイムを稼ぎ、ライバルがピットインしたタイミングで逆転を狙うのだ。

 しかし、フェラーリの対応は早かった。メルセデスのピットイン気配を察知すると、すぐさま自分たちもピットインの準備を開始。21周目、ライコネンメルセデスの2台より先にピットイン。アンダーカットは失敗か、と、そう思われた。
 しかし、なんとライコネンのピットインを確認すると、ピットインの準備を進めていたメルセデスのチームクルーたちはそそくさとガレージの中に帰っていくではないか!
 そう、アンダーカットはブラフだったのだ。メルセデスの狙いは、相手チームより後にピットインすることによって逆転をねらうアンダーカットとは真逆の戦略、オーバーカットだった。
 ライコネンは交換したタイヤが温まるまではペースを上げることができない。そして、21周を走ってきたハミルトンのタイヤはまさに今がピークだ。ここでペースを稼ぐことができれば、ピットインしたタイミングでライコネンの前に出ることができる。

「“ハンマータイム”だ、ルイス!!」

 メルセデスのピットから、ハミルトンに無線で檄が飛ぶ。ハミルトンの鬼気迫るアタックが始まった。
 もちろん、ライコネンもこれを指をくわえてみているわけがない。冷えたタイヤで暴れるマシンをテクニックで抑え込みながら、限界アタックを敢行する。
 お互いのアタック、目に見えない戦い。次の周でハミルトンがピットからコースに戻ったとき、先頭にいるのはいったいどちらなのか――。

 と、ここでまた奇妙なことが起こる。改めてハミルトンのピットインに備えていたクルーが、再びピットの中に戻ってしまったのだ。ファステストタイムを出しつつ、ホームストレートを駆け抜けていくハミルトン。

「ステイアウトだ。君はペースを持っている」

 ピットからハミルトンへ飛んだ指示は、コース上にとどまることだった。
 翌周も、翌々周もハミルトンはなぜかピットへは入らない。マクラーレンのピットは不気味な沈黙を続けたままだ。ライコネンのペースが上がらないと踏んでいるのか、
それとも......? 観客も、そしてフェラーリもその真意をつかむことができなかったが、ハミルトンがステイアウトを続ける以上、ライコネンはプッシュし続けざるを得なかった。

 

 24周目、タイヤの熱入れを終えペースをつかんだライコネンがファステストラップを更新した。いっぽうのハミルトンはタイヤの限界を迎えペースを落としていく。ラップタイムで1秒以上の差をつけられ、もはやピット後にライコネンの前にでることは不可能だ。
 結局ハミルトンは28周目にようやくピットイン。しかし、ライフを終えたタイヤで走り続けた結果、コースに戻ったときにはライコネンは遥か前方へと遠のいてしまった。
なぜ、ハミルトンはステイアウトを選択したのか......いぶかしみつつも、ひとまず胸をなでおろすフェラーリチーム。純粋なスピード勝負であればフェラーリに分があることは、昨日の予選で証明されている。ピット戦略で前を譲らなかった以上、このグランプリの勝者はライコネンで決まりだと、だれもがそう思った。

 

 しかしこのとき、メルセデスチームはまったく違うビジョンを見ていたのだ。
ピットからハミルトンへ無線が飛ぶ。

ライコネンは4.4秒前方。
――そして、さらにその前方に、まだピットインしていないボッタスだ」

 そう、ここにきてライコネンの前方には、もう一台のメルセデスであるボッタスのマシンが立ちはだかっていた。
 メルセデスのピットから、ボッタスへ「ライコネンを前に行かせるな」と指示が飛ぶ。タイヤ無交換でここまで走ってきたボッタスは、ライコネンより明らかにペースが遅い。

 通常であれば、ライコネンはボッタスをなんなくパスできたであろう。だが、彼にはひとつ、おおきな誤算があった。タイヤである。

 ハミルトンのオーバーカットを警戒し、交換直後のタイヤに急激な熱入れを行ったことが、ここにきて裏目に出てしまった。ライコネンのタイヤはこの時、オーバーヒートによって悲鳴を上げていたのだ。左リアタイヤには痛々しいブリスター(火ぶくれ)が発生し、コーナーの立ち上がりでスピードをキャリーすることができない。マシン差は解消されたとはいえメルセデスのストレートスピードが速いことに変わりはなく、手負いのタイヤではついていくことがやっとであった。

 ここにきて、メルセデスの目論見が明らかになった。アンダーカットと見せかけてオーバーカットを仕掛けるという戦略さえ、とどのつまりはブラフ。二重のブラフの先にあったのは、ライコネンのタイヤを痛めつけ、レース終盤に勝負をかける作戦だったのだ。

 ライコネンを猛追するハミルトン。ファステストタイムを更新し、一周で1秒以上差をつめるスーパーアタックを仕掛ける。
 そしてついに33周目、ハミルトンがライコネンに追いつき、36周目には役目を終えたボッタスがようやくピットイン。勝負は再び一番手ライコネン、二番手ハミルトンの一騎打ちとなった。

 勝負がふりだしに戻っただけにも見えるが、そうではない。なぜなら、ライコネンはハミルトンより8周も長く、そして激しく酷使したタイヤを履いているからだ。
 ライコネンはペースを上げて必死に逃げをうつが、ハミルトンはそれにぴったりと追随していく。暴れるライコネンのマシンに対し、ハミルトンのマシンは傍目にも安定している。

 何とか最後まで持ってくれ――。ライコネンが、フェラーリが、そしてスタンドのティフォシたちが一心にそう念じる。

 しかし、44周目。最終コーナーのパラボリカ。コーナー脱出でうまくラインに乗せたハミルトンが、続く45周目のホームストレートでライコネンに並びかけた。第一シケイン、ハミルトンとライコネン、互いに意地をかけたブレーキング勝負――。

 はたして、先にコーナーへ侵入したのはハミルトンだった。一周目にベッテルを抜き去ったブレーキングで、今度はライコネンをも降したのである。
 古強者のライコネンも、限界を迎えたタイヤでハミルトンを抑え込むことはできなかった。頭を抱えるフェラーリのクルーたち、コースに響くティフォシたちの絶叫。

 初めてトップに立ったハミルトンは一気にリードを広げて残り9周を走り切り、見ごとこの戦いで勝利を収めたのだった。

  

 予選から決勝にかけて、メルセデス有利と思われていたモンツァでそれを凌ぐ速さを見せつけたフェラーリ。もはやメルセデスのマシンにはアドバンテージがないことを証明した。
 これに対しメルセデスは、“チームの総合力”で立ち向かった。
 レースの肝がタイヤであることをいち早く見抜き、トップ同士の争いにとらわれず、チーム戦略によって勝利を収めた。この面において、いまだメルセデスのレース戦略がフェラーリを一枚上回っている。イタリアGPは、それが如実に表れたレースとなった。

 このイタリアGPでヨーロッパラウンドは終了し、いよいよシーズンは終盤に突入していく。次戦、シンガポールGPが行われるマリーナベイ・ストリート・サーキットはロングストレートが存在せず、パワーの差が出にくいコースだ。さらにランオフエリアのない市街地コースであるため、レース中かなりの確率でセーフティカーが出動する。よって、勝利のためには的確なレース戦略が必要となる。フェラーリにとって、今回と同じ轍を踏まないことが肝要だ。

 はたして、メルセデスが5連覇に向かって突き進むのか、フェラーリが待ったをかけるのか。2018年シーズンはまだまだ目が離せそうにない。

 

オートモビルカウンシル2018 気になった展示車まとめ

今年で3回目の開催となるオートモビルカウンシル。

クラッシック・ミーツ・モダンをテーマに一昨年から開催されているこのイベント、会場内は音楽無し、コンパニオンなしで非常に落ち着いた雰囲気なのがとても気に入っており、初回から毎年参加している。

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今年も数多くの名車が集まった。
気になったものをいくつかご紹介する。

アルピーヌA110 1600SC

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主催者展示となるアルピーヌA110。奥に見えるリメイク版新型A110とともに会場入り口で出迎えてくれた。

丸っこいルックスが非常に愛らしい。

キュートな見た目に反してその運動性能は高く、60~70年代のラリーシーンを席巻。アルピーヌ・ルノーWRCの初代コンストラクタータイトルをもたらした名車だ。

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このリアのエアインテークが非常に好き。ラジエター冷却用とのことなんだけど、こんな可愛らしいサイズのインテークでエンジン冷えるのかしら…?

アルピーヌA110プルミエールエディション

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こちらはリメイクされた新型のA110。
アルピーヌブランド自体も、95年のA610生産終了から22年ぶりの復活となる。

現代車としては小ぶりなサイズにいやらしさのないすっきりしたフェンダーラインが好印象。ぶた鼻ルックのフォグはちょっと気になるけど、これも旧A110へのリスペクトという名の孝行か。

こちらのプルミエール・エディションはA110復活を記念した全世界1955台の初期限定モデル。このうち日本には50台があてがわれ、既に完売となっている。

ベントレー ブロワー

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指が写りこんでしまって失礼。ベントレー4 1/2リットルのスポーツモデル、ブロワーである。

フロントに見える空冷フィンの切られたケースが”ブロワー”、いわゆるスーパーチャージャーだ。かなりのサイズ感で、最初目にはいったときはインパクトがあった。

博物館にあってもおかしくない貴重なモデルをここまで間近で見られるのがこのイベントのいいところだ。

…ただし、粗相がないよう十分気をつけたい。

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日産 フォーミュラE カラーリングコンセプト

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オール電化フォーミュラレースとして注目を集めるフォーミュラEに、日本メーカーとして初のワークス参戦を発表した日産。フォーミュラEではボディーワークは全車共通のため、カラーリングコンセプトとしての出展となる。

同じく参戦を発表しているAudi、DSのカラーリングと比較すると、シンプルな色使いがすっきりしていて気持ちいい。

12月のシーズン開幕で走っている様をみるのが楽しみだ。

210型ダットサン乗用車 富士号

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だっつん富士号(っていうとなんかかわいいよね)。
日産ではじめてアメリカへの輸出を行ったモデル。その耐久テスト兼宣伝として、オーストラリア一周ラリー「モービルガス・トライアル」に参戦、見事クラス優勝をのがこの富士号だ。

フィニッシュコンデションが保たれており、大きくへこんだフェンダーやグリルがラリーの道程がいかに厳しかったかを物語っている。

日産 MID4-Ⅱ

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87年の東京モーターショーに出展されたコンセプトカー。
実写は初めて見たが、想像していたよりずっとコンパクトだ。全長4300㎜というから、いまの86とほとんど変わらない。

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こちらがエンジンルーム。コンセプトモデルとは思えない完成度で、実際市販化直前だったそうだ。結局経営的判断で市販には至らなかったが、このエンジンはデチューンされてフェアレディZなどに搭載された。

ロータス セブン・ロータス イレブン・ロータス 23B

f:id:skm_B:20180815065658j:plainセブンイレブン(そうじゃない)。
イレブンと23Bの尋常ではない車高の低さ。フロントノーズで膝カックンができそう。
全高はイレブンが810㎜、23Bにいたってはなんと660㎜である。

シボレー コルベット コンバーチブル(type C2)

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スティングレーことC2コルベット

会場の隅でひときわオーラをはなっていた。見よ、このエッジの効いた鋭いボディライン! とても60年代のデザインとは思えない。いやーカッコイイ!

日産 180SX

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一気に親近感の湧くモデル。「平成の名車」をテーマにしたカーセンサーのブースだ。
親近感とは言ったものの、さすがに生産中止から20年がたって街中で見かけることも少なくなった。近年のドリフトブームで練習車としてひっぱりダコなこともあり、これだけ”どノーマル”の車両はある意味で貴重かもしれない。

アストンマーティン DBS スーパーレジェーラ

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アストンマーティンのブース、日本では一般初公開となるスーパーレジェーラ。新型DB11をベースにパワーアップと軽量化を施した特別モデルだ。フロントに積まれるV12エンジンは怒涛の725馬力を発揮する。

ガバッとひらいた巨大なフロントグリルが迫力があって印象的だ。

マツダ 魁 コンセプト

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 マツダはファミリア、アクセラといったハッチバックの系譜をフィーチャーして展示していた。

魁 コンセプトは2017年の東京モーターショーで発表された、次期アクセラのデザインスタディと目されるモデル。これまでのマツダ車に見られたこれみよがしなキャラクターラインをやめて、ボディパネルのうねりで躍動感を表現しているのがよい。ぜひこの方向性を貫いて欲しいと思う。

 

 

今年は去年と比較して来場者1割マシとのことで、確実に人は増えている。
一方でメーカーの展示は減ってしまっていたのが少し残念なところだった。

来年度の開催はすでに決定しており、初の春開催となる。
落ち着いた雰囲気でゆっくりと名車を眺めることができる素晴らしいイベントなので、これからも末永く開催されていくことを願う。

旅行記 ー箱根・山梨ー

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3月末に箱根旅行へ行ったのでそのレポート。

今回の目的は前々から計画していた富士登山の足慣らし。
参加者は私、頬付さん、DG-lawさんの3人。
アクセスや山の規模も考えて箱根山に登ることとなった。

春休みシーズンで有名観光地であることから、早めの現地入りをするべく、5時半に出発。途中三島駅でDG-lawさんと合流し、箱根へと向かった。

結果的に、この早めの出発が思いがけず役立つこととなった。

現地につくと、桜がまだ咲いていないこともあって思ったほど混んではいなかった。さっそく登山口にむかうと、無慈悲な「関係者以外立入禁止」の立て札。

なんと大涌谷の噴火活動によって登山口が閉鎖されていたのだった。

登山口の前で呆然と立ち尽くす我々三人。
とんだ情弱ぶりを晒してしまったわけだが、インターネットを軽く回ってみても閉鎖情報が出てこないし、何より後で宿の受付さんにこの話をしたときに「そうなんですか!?」と驚いた様子だったので、弱かったのは我々のアンテナではなく神奈川県側の情報発信だと信じたい。

出発が早かったこともあって時間に余裕があったため、予定を変更して金時山に登ることとなった。

車で移動すること約15分、金時山ふもとにある金時神社に到着した。

金時山箱根山の北西に位置し、標高は1212m。箱根外輪山の中で最も高い山となる。金太郎こと坂田金時の伝説で知られる場所だ。

巨大なマサカリ、金太郎が手毬にしたという伝説がある巨石「金時手毬石」、おなじく金太郎が雨宿りをしたといわれる「金時宿り石」などを横目に山道を登っていく。

金時山は、その山体から「猪鼻嶽」の別名を持っている。すなわち、山頂が猪の鼻のように飛び出し、天を突くように伸びているのだ。このため、山道自体は片道一時間半程度と長くないのだが、とにかく斜度がきつい。特に頂上付近は手をつかってよじ登る場所も少なくなかった。

ちなみに、ドローンでとった山頂の写真がこんな感じ↓

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山頂付近、ほぼ崖である。
私自身は登山経験がほぼないため、登りきる頃には息も絶え絶え。しかし、その甲斐あって山頂で見る絶景は感動もひとしおであった。
頂上には木々が生えておらず、付近により高い山が存在しないため、春霞越しに遠く富士までよく望むことができた。

f:id:skm_B:20180414181746j:plainその後、いったん宿まで戻って夜まで爆睡。
強羅で夕食をとることになった。

箱根では桜はまったく咲いていなかったのだが、強羅駅周辺は見ごろである。桜を横目に、目当てのお店へと向かう。

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やってきたのは、田むら銀かつ亭である。

ginkatsutei.jp

とんかつ屋だから銀かつ亭、というわけではなくて、もともと和食料理屋だったのだが、あまりにもとんかつ屋と間違われるために開き直ってとんかつをメインに据えた、というなかなかユニークな経緯をもつお店だ。

かなりの繁盛ぶりで、閉店間近であったというのに10組以上の客待ちが発生していた。滑り込みで整理券を手にいれ、待つこと60分程度で中に入ることができた。

名物である豆腐かつ煮御膳を食べる。

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この豆腐かつ煮は、同じく強羅の名物店である「箱根 銀豆腐」の豆腐でひき肉をはさみ、かつ鍋にしたものだ。

食べてみると、割り下がとてもいい感じ。甘さ、しょっぱさがちょうどよく、ご飯が進む味をしている。噛むとなかから出てくるひき肉の餡とよく味が絡み、練りこまれた生姜がアクセントになっている…と思う。確かに生姜の風味を感じたが、花粉症で鼻が大惨事だったのでこれには自信がない。

さらに特筆すべきは、豆腐だ。
豆腐を揚げているはずなのに一切“す”が立っておらず、やわらかくなめらかな舌触りはチーズケーキのようだ。木綿とも絹とも違う食感は、いままで食べたことがない。にがりによる苦みや臭みはまったく感じないため、ともすれば割り下の濃い味にかくれて存在を見失う。しかし、注意して味わうことで大豆のやさしい甘味をしっかりとかんじることができ、まさにこの料理の屋台骨といっていい存在であった。

 

食後、この日は宿に戻って就寝となった。

 

翌日、この日はまったくノープランであったが、DG-lawさんの「肉が食べたい」という鶴の一声で、静岡の有名チェーン「炭焼きレストランさわやか」へとむかった。

げんこつハンバーグの炭焼きレストランさわやか

箱根から最寄りの店舗が御殿場にあったため、そちらにむかった。静岡におけるさわやかの人気は絶大であり、昼時についたとあっては混雑必死のため、開店前に到着できるようにチェックアウト後、まっすぐに店へと向かう。

しかし、さわやかの人気は予想以上のものだった。

開店前の時点で駐車場は満車、待ち時間は驚愕の150分待ちである。

私の地元たる浜松であれば開店前ならばこれほど混むことはないのだが、誤算だったのは県外からの客の多さだった。駐車場に止まっている車は9割以上が県外ナンバーである。県内最東部に位置する店舗で、御殿場インターからも近いからだろう。

しかたないので近くのブックオフで時間をつぶし、2時間後、入店することができた。

なお、DG-lawさんは今回が初のさわやかデビューである。

わたしとしては食べなれた味だが、やはりハンバーグであればこの店がいちばんだ。注文は定番のげんこつハンバーグと、個人的に大好きな焼き野菜カレー(写真はHPより)。

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ハンバーグで有名なさわやかであるが、じつはこのカレーがとても旨いのでお勧めである。市販のルーで作ったカレーとは一味違うスパイシーな味わいがハンバーグによくあう。
もちろんハンバーグも旨い。炭焼きでこんがり焼かれたあらびきのハンバーグは肉粒感ばっちりで、噛むとぎゅっとした歯ごたえとともに、旨味たっぷりの肉汁が口の中にあふれる。さらに食べ進む中は火が通っていない赤身の状態で、肉の甘味をより一層感じることができる。このハンバーグを、ソース、塩コショウ、カレーの3つの味で食べるのが私流だ(最も私以外にもやってる人は大勢いるだろうが)。

ハンバーグを満喫した後は、富士を超えて、今が旬のゆるキャン聖地巡礼に赴くことになった。
甲府の町をぬけ、笛吹フルーツパークの満開の桜を横目にやってきたのは、アニメ4話、5話に登場したほったらかし温泉である。

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私自身、この温泉にくるのは3回目である。
そもそもが有名な観光地のため、この日も大勢のひとでにぎわっていた。
春霞のため富士はうっすらとしか見えなかったのが残念だが、それを踏まえても絶景で、やはりいい温泉である。
ちなみに、「ほったらかし」という名前とは裏腹にかなり力を入れて観光地化がなされており、食事をとれる売店、無料の休憩所に加え、山梨の名産物を販売するお土産屋やキャンプ場までも併設されている。

風呂から上がった後、DG-lawさんと頬付さんは温玉揚げを、私は温玉揚げは以前食べたので、桃ソフトを購入して食べた。

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地元の桃を使用したソフトクリームは果汁感たっぷりで、シャーベット的である。
もものいい香りと甘味を堪能した。

その後、みのぶまんじゅうを食べるべく身延へ向かった。
到着したのは6時過ぎであり、身延駅周辺はすでにほとんどの店舗が店じまいであったが、B級品のため余っていたというまんじゅうを滑り込みで購入することができた。

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あんこは甘さが少々控えてあり、それを包む生地のわずかな塩味とうまくマッチしていて美味だ。昨日の登山で疲労した体にあんこの甘さがしみる。通常のまんじゅうより生地が固く感じたのは、みのぶまんじゅうの特徴なのか、それともあまりものだからなのか。定かではないが、うまいことに変わりないのでまぁ問題ない。

ここでDG-lawさんは身延駅から電車に乗り込み、私と頬付さんは車で帰路についた。

今回の旅行では私の体力のなさが露呈してしまった。本番の富士に備えて運動をするようにしようと思う。

あと、田むら銀かつ亭のかつ煮はとても気に入ったのでまた行きたいと思う。今度はとんかつのほうも食べてみよう。

【ダンケルク鑑賞記】『そこにいた』という理由で人が死ぬ、極限状態の追体験

去る日曜日、頬付氏とともに映画を見に出かけた。
お目当てはベイビー・ドライバーだったのだが、上映館が少なく県内ではやっていないため、お隣の県まで足を延ばすこととなった。

で、時間もあるしせっかくIMAX設備がある劇場まで来たということで、最近話題の『ダンケルク』も併せて視聴してきた。今回はその感想を記す。

 

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ダンケルク』は、第二次世界大戦においてドイツ軍に包囲され、フランスの港町ダンケルクに追い詰められた四十万人ものイギリス・フランス連合軍の兵士たちを救うべく決行された大規模撤退作戦を描いた映画だ。

この作品でまず感じたのは、「当時その場所にいた人間の追体験を徹底したテーマにしているということだった。作品全体を通じて、セリフや背景説明、人物描写などは極力省かれている。そのかわり、映像と音響によって登場人物が見ていた風景、聞いていた音が克明に描き出され、その心理状況が『追体験』として視聴者に伝わるよう工夫されているのだ。

例えば映画の冒頭は、ダンケルクの町に取り残された一人の兵士トミーがドイツ軍の銃撃から命からがら逃れ、防衛線の内側へ走りこむシーンから始まる。

彼がなぜ兵士となったのか、どこの部隊で何をしていたのか、いまはどんな状況なのか。そういった説明は一切なされない。代わりに状況を雄弁に語ってくれたのが、IMAXの大画面+大出力スピーカーを存分に使った映像と音響だった。

特に印象的なのが音響だ。
先述した「銃撃から逃げる」というシーンでも
・見えないどこかで火薬が爆ぜ、空気が震える
・凄まじい速度の「何か」が、風を切って身体のすぐそばを過ぎ去る
・過ぎ去った「何か」が近くの地面に着弾し、はじけ飛ぶ
といったように、いまがどんな状況なのか、説明はなくとも『音』で分からされる。正直なところこれがかなり恐ろしく、一切の背景説明がないにもかかわらず、開始数分にしてトミーに感情移入してしまった。すなわち、映画を見ている立場でありながら、私も「ダンケルクから逃げだしたい」と心から思ったのだ。

もうひとつ、音響による臨場感の演出ですごいと思ったのが『身体の中に響く音』の表現だ。

砂浜で爆撃を受けるシーン。遮蔽物のない砂浜で、逃げることも隠れることもできず、トミーはその場にうずくまりただただ祈ることしかできない。頭上を飛び去る爆撃機、そのあとを追うように爆発が画面奥から近づいてくる。ひとつ、またひとつと爆発が起こり、浜の砂と兵士が頭上高く跳ね上がる。いよいよトミーのすぐそばで爆発が起こった。なんとか直撃は免れほっとしたのも束の間、跳ね上げられた湿った重い砂が、文字通りの『土砂降り』となってトミーの体にボトボトと容赦なく降り注いぐ。

この降ってきた砂が身体を打つ音が妙にリアルで、自分が全身砂まみれになったようで気が滅入ってしまった。ダンケルクから離れたいと思う気持ちは増すばかりである。

ほかにも船が沈むシーンでは水しぶきを被る音で溺れるかと思ったし、列車に揺られるシーンでは線路に揺られる音で自分もまた眠くなる。…まったくの余談だが、列車やバスの振動が強烈に眠気を誘うのはなぜだろう。

 

映像面では、ノーラン監督のアナログ信仰が見事に火を噴いている。駆逐艦も実物、スピットファイアも実物、飛行機の墜落シーンでは実際にIMAXカメラを飛行機とともに海に沈め、砂浜を埋め尽くす40万人もの兵士たちですら実写エキストラで足りない分は兵士が描かれたボール紙という、ともすれば勘違いこじらせクリエイションかといいたくなるような頑固なこだわりっぷりだが、そこはそれ、実際に出来上がっている映像を前にすれば、私のような凡人はただただその完成度のまえにひれ伏すのみだ。

実際の戦闘機や駆逐艦が使われた映像は迫力満点で、特に戦闘機の機内が映るシーンはコクピットのタイトな感じや煩雑とした計器類、風防越しに見る空と海、レティクルから覗くメッサーシュミットなど、パイロットの視点の再現が素晴らしい。

 

以上のように、ダンケルクはとにかく登場人物の視点の再現に力を入れている。そして、登場人物は全員普通の兵士、もしくは船乗りであり、ヒーローのような存在は一切現れない。鑑賞中の観客は彼らと同じ視点から、全滅のタイムリミットが迫るダンケルクの危機的状況を体験し、兵士の無防備さ、無力さを痛感する。見終わった後、身体がじんわりとした疲労感と感動に包まれていた。これまでにない映画体験をすることができて非常に満足しており、遠くの劇場まで足を運んだ甲斐があったと思う。

 

最後にダンケルクを視聴する際の注意点をいくつか。

まず一つ目。この映画は、ダンケルクの浜に残された兵士の『一週間』、救出へ向かう民間船の『一日』、海上でドックファイトを繰り広げる戦闘機の『一時間』という3つの視点が並列で描かれ、それが物語のクライマックスに向けて徐々にクロスオーバーしていく、という構成になっている。時系列のシャッフルがあるので、混乱しないように注意されたい。私は当初大混乱した。

二つ目。この映画はぜひIMAXシアターでの鑑賞を勧めたい。というか正直、IMAXで見ないとつまらないまであり得る。上記の通りストーリー自体はかなりシンプルで、映像、音響をフル活用にてダンケルク追体験をする映画になっているからだ。少なくとも映画公開終了後にレンタルで借りてきたものを家で見ても、今回映画館で感じた感動は味わえないだろうな、と思う。

三つ目。IMAXシアターへ向かう際は、体調不良には気をつけてほしい。視界を覆いつくす巨大スクリーンと身体を震わす大音響という環境は想像より体力を使う。同行した頬付氏は前日飲み会だったらしく、寝不足と二日酔いに映画酔いが加わってグロッキーになっていた。

以上の点を踏まえ、ぜひ素晴らしい映画体験をして頂ければ幸いである。

 

ベイビー・ドライバー鑑賞記に続く。
…長文書いて疲れたから続かないかもしれない。

宮城-岩手旅行記~グルメ編~

夏季休暇を利用して宮城及び岩手まで行ってきた。
旅行記自体はDG-law先生が立派なものを書いてくださったので、私は目先を変えて旅先で食したものについてのレポートを記そうと思う。

8月13日-仙台-

コミケ後、14:30頃東京を発ち、この日はチェックポイントである宮城県仙台市に一泊。せっかく仙台に来たということで、夕飯は牛タンをいただくことにした。

お邪魔したのは、牛たんのせんだい 本店。店に着いた頃には午後九時を回っていたというのに、それでも客待ちが発生しているという繁盛ぶりだった。

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15分ほど待った後、店内へ。
ひとまず、お目当ての牛たん定食、そして本日のおすすめとして紹介されていた牛たんユッケを注文した。

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さっそく、牛たんを一口。これがうまい。
肉厚で歯ごたえがあるのに柔らかいという、今まで経験したことのない食感。噛んだ瞬間はぎゅっと反発があるのに、次の瞬間ジャキンッとあっさり噛み切れる様はまるで歯がハサミにでもなったかのようだった。そして、ひとつ噛むたびに肉の中からとめどなく溢れ出てくるうえ、濃くつけられた塩味がその旨味を一層引き立ててくれる。 
次いでごはんを口に運べば、麦入り飯特有の固めのご飯粒がころころと口の中にひろがり、牛たんを包んでくれる。これが相性抜群で、どんどんごはんが欲しくなる。もし次にこの店に行くことがあれば、ごはんは大盛でいただこうと思う。

次に牛たんユッケ。はじめにメニューを見たときには、牛たんのユッケなんてあるのかと驚いた。ユッケ特有のトロトロした食感なのか、それとも牛たんらしく歯ごたえがある食べごこちなのか、期待に胸を膨らませながら一口目を口に運ぶ。
結論から言うと、この牛たんユッケは牛たんの生ハム+卵黄といった感じで、想像していたものとはだいぶ違うものだった。けれど、これはこれでおいしい。塩漬けされて水分が抜けた牛たんは、焼いた牛たんよりむしろ歯ごたえがあり、またハム肉特有の風味も強い。おかずというよりは、むしろお酒のおつまみに良くあいそうだ。お店としてもかなり豊富にお酒を取り揃えていたので、酒好きの人にはたまらないだろうと思う。
…もっとも、残念ながら私は下戸なのだけれども。

結論として、この日の夕食は大満足だった。このお店で牛たんを食べるまで、牛たんというものがここまでおいしいものだとは知らなかった。普段、焼き肉屋や出店で食べていた牛たんは、いったい何だったのだろう。私の中で、牛たんに対する認識が変わってしまった。これを読んでいる方の中に仙台へ赴く予定がある方は*1、ぜひ、一度食べてみることをお勧めしたい。

8月14日-松島・平泉-

朝早くに仙台を発ち、第一目的地の松島に到着。
ここではご当地グルメとして名高い「ずんだ」を使用したパフェをいただいた。

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瑞巌寺門前に店舗を構える伊達なお土産堂の、その名も「ずんだプチパフェ」。
ずんだ餅とずんだソフトクリームが一度に楽しめるのは、頻繁に訪れる機会がない観光客にとってはありがたい。

まずはずんだ餅をいただく。小豆餡とは明確に違うふんわりとした食感としつこさのない甘さが口の中に広がり、同時に枝豆の風味が鼻を抜けてゆくのが心地いい。そのなかにわずかに感じる塩味か、一層お餅とずんだの甘さを引き出してくれる。また、お餅そのものももっちりとしていて甘く、ずんだとよく合う。

次に、ソフトクリームと合わせて食べる。冷たいソフトクリームと温かいお餅が口の中で絡み合って実においしい。洋風のソフトクリームと和風のずんだ、それぞれのもつ異なる甘味が一体となって誕生する新しいスイーツは、温、冷、和、洋の四つの楽しみが代わるがわる押し寄せて、最後の一口まで飽きることなく食べることができた。

ずんだは極端に足が早いため、ご当地でないとなかなかお目にかかることができない、まさにご当地グルメと呼ぶにふさわしいものだが、味そのものも逸品であることを思い知らされた。南東北へお寄りの際は、是非ご賞味を。

 

そのまま平泉へ移動。この日の昼食は平泉でとることにした。
お邪魔したのは、中尊寺の参道中腹にお店を構えるそば処義家
苔むした屋根が参道の雰囲気と相まっていい感じである。

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ここでは人生初のわんこそばに挑戦。メニューではわんこそばの量が一重、二重、三重、から選べるようになっていたが、ひとまず一重(わんこ12杯)を注文した。

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三人分ともなると見た目でまず圧倒される。すごい数のお椀だ。
さっそく一杯目をいただく。お蕎麦をすすると、昆布だしの優しい甘味が口の中に広がる。じつは私、昆布だしのお蕎麦をいただくのは今回が初めてだったのだが、これが非常においしかった。カツオだしのつゆよりもしつこくなく、それでいて前述したとおり、とても優しい甘味がある。さらに、付け合わせのとろろや豊富な薬味のおかけでさまざまな味、風味を楽しむことができるので飽きが来ない。お蕎麦を一杯食べるたび、次はどの薬味を入れようかと考えるて、味の変化を楽しんむ。そうして気づけば、あれだけあったはずのお椀はあっという間に食べきってしまった。
初めこそわんこそばと普通のそばって何が違うのか、と思っていたが、なるほど「わんこそば」という提供形式をとることで、普通に食べるお蕎麦とは一風変わった楽しみ方ができるのだなと知り、良い経験になった。

この日はその後花巻の温泉旅館で一泊した。

8月15日-遠野-

翌日、旅館で朝食を済ませ、遠野へと向かう。
昔ながらの曲がり屋やカッパ淵をめぐりつつ、伝承園で昼食となった。
メニューを見たところ、どうやら郷土食の「ひっつみ」と「焼き餅」が推しのご様子。個人的には歩き回った後でごはんとお肉が食べたい気分だったため、ひっつみ+ミニチャーシュー丼のひっつみAセットと焼き餅を注文した。

焼き餅のほうは待ち時間なしですぐに出てきた。大きさはおむすび大で、餃子のように具を餅で包んである。さっそく一口かじる。もちもちしながらも歯ごたえがある食感で食べ応えがある。すると、なかからシロップ状になった黒砂糖が溢れ出てきた。こぼれないよう急いで食べ進むと、今度は味噌とクルミが現れる。黒砂糖のしっかりした甘さと味噌のしょっぱさが合わさり、さらにクルミのカリカリした触感と香ばしい風味が良いアクセントとなっていている。
調べたところ焼き餅をたべられるのはここ伝承園と、道の駅遠野風の丘だけのようだ。お立ち寄りの際は、食事の用がなくともおやつとしておすすめしたい。待ち時間もないし、ラップにくるんでくれるのでなんなら食べ歩きもできるだろう。

そうして焼き餅を食べている間に、ひっつみAセットが出てきた。
まずはチャーシュー丼といただくと、驚くことにこれがおいしかった。てっきりパサパサのチャーシューがのっかったごはんが出てくるのかと思ったが、肉は柔らかく、良い塩梅に焦げ目がついていて非常に香ばしい。たっぷりとかかっているタレも味か濃く、食が進む。どうせ観光地食堂だろうと見くびっていたが、こればどうやらひっつみにも期待ができそうだ。

そう思い、早速ひっつみに手を伸ばす。ひっつみという料理は初めて食べたが、練った小麦粉をひっつまんでなべに放り込むことからそう呼ばれるらしい。なるほど、箸でつかんでみると、うどんやほうとうのような麺状にはなっておらず、分厚いワンタンのようである。たべてみると、昔お婆ちゃんの家で食べた手作りのお団子を思い出す食感である。もちもち感はあるものの、さっくりと噛み切れる。味のほうも、鶏がらのスープが良く絡んでいておいしい。あっさりした触感としっかりした味付けのおかげでさくさくと食べ進むことができ、あっというまに食べ終えてしまった。

失礼な話、観光地で出てくる郷土料理には味に不安もあったのだけれど、まったくの杞憂だった。

この日はこの後八幡平へ向かい、山頂の宿で一泊した。

8月16日-小岩井農場-

翌日、八幡平を観光した後小岩井農場へと向かい、まきば園内の山麓館農場レストランで昼食。少々奮発してWステーキ2種盛りとチーズケーキを注文した。

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正直な話、ここで食べたものは全部おいしかった。暴力的なまでの素材パワーに、私の味覚中枢はあっけなく陥落。なにを口に入れても新鮮。野菜嫌いの私がサラダバーをお替りしたほどで、不満があるとすれば「もっと食べたい」というくらいである。ヒレとサーロインのステーキはどちらも絶品。ナイフを使わずともフォークだけでも食べられるんじゃないかというほどの圧倒的な柔らかさと、口に入れた瞬間広がる肉のうまみ。
サーロインのほうは中までしっかり火が通っており、脂がのっていて柔らかい王道のステーキ。対して、ヒレのほうは赤身が残るレア状態。厚い肉は噛むとぎゅっと歯ごたえがあり、赤身肉のうまみがぎっしりと詰まっている。部位の違い、焼き方の違いをそれぞれ楽しめる。最高の一言だった。

残念なことに、このWステーキ2種盛りは7月から8月までの期間限定メニューであるらしい。今回の旅行で食べることができたのは幸運だった。

食後のチーズケーキも絶品だったが、何より、セットでついてくる牛乳が最高だった。
牧場ご当地だからこそ提供可能な鮮度抜群のしぼりたて生乳は、市販の牛乳とは一線を画す味わいで、甘く濃厚でありながら牛乳特有の臭みがまったく存在せず、すっきりとした心地よい風味が鼻を抜けていくのにはただただ感動である。私がこれまで飲んできた牛乳は「飲みやすいけど水っぽい」か「濃厚だけどくどい」のどちらかだったが、沸かし殺菌していないだけでこれほど違うとは思わなかった。銀の匙で八軒君が五体投地していたのも納得だ。
しかし、これでも低温殺菌しているというのだから、真の生乳はどれほどのものなのか気になるところ。食品衛生法の関係で流通は一切していないが、いつか飲んでみたいものである。

ちなみに、この牛乳は「小岩井低温殺菌牛乳」としてまきば園内のショップでも販売しているが、よっぽど品質管理を攻めているらしく「園内で飲めよ、絶対に持ち帰るなよ!(意訳)」と注釈があった。この味が牧場へ行かないと楽しめないのはざんねんだなぁ…。

――などと思っていたところ、最近発送用の販売も始めたらしい。

TG3 低温殺菌牛乳3本セット | 小岩井農場オンラインショップ

お金に余裕があるときに取り寄せてみようと思う。

 

そんなこんなで、今回の旅行は終了となった。美味しいものをたくさん食べることができて大満足である。 具体的には、半年以上放置していたブログを再開するぐらいには実りがあった。 岩手県がこれほど食に恵まれた土地だとは知らなかった。


ところで、私が好きなとある王様*2の言葉に、以下のようなものがある。

100パーセント満足した旅は不幸だ。もうその場所へ行く動機を失う。

今回の旅行には大いに満足したが、まだまだ猊鼻渓浄土ヶ浜、北山崎、龍泉洞などなど、見ていないものは多くあるので、いずれまた訪れる機会があると思う。

いまからもっとおいしいものがないか、チェックしておかなければ。

*1:じつは東京にも支店があるので、東京の方も

*2:具体的には、サバンナの王様である。二番目の。

2016年冬アニメ第一印象まとめ その1

視聴した2016年冬アニメ、それぞれの第一話の感想まとめ。

 

Dimension W


個人的に一番期待している作品。
カウボーイビバップ好きとしてはこういう近未来アクションはたまらない。

不愛想で厭世主義だけど根っこはいい奴な主人公と、真面目だけどちょい天然入ってるヒロインの組み合わせは良いです。ええ。

自動車好きとしては主人公キョーマの愛車として2000GTが登場するのも見どころで、しかも嬉しいことにかなり力が入っている。OPにもカーチェイスのシーンがあるが、モデリングはリアルだし、挙動も旧車に特有の大きなロールがちゃんと描かれていて文句なくカッコいい。すごい。

あとOPのダンス。個人的にはああいう外し技、嫌いじゃないですよ。うん。

 

無彩限のファントム・ワールド


おっぱい枠。
正直おっぱい以外に見どころがないアニメ。
でもおっぱいだけでお腹いっぱいになるからなんの問題もねぇな!

…なんて言っておきながら個人的には玲奈ちゃん派です。私も入り身投げされたい。

 

紅殻のパンドラ


ここをキャンプ地とする!
てなわけで個人的難民キャンプ枠。きららじゃないけど。
お蔵入りになっていた攻殻機動隊のスピンオフ企画を六道神士がコミカライズしたというなかなかキメラな作品。攻殻機動隊のノリを期待すると裏切られます。どっちかっていうとエクセルサーガです、これ。

キャラデザイン、展開、演出、すべてにおいてちょとノスタルジックな気分になるくらいに古めかしい作風ですごく落ち着く。10年くらい前、ハルヒ以前の深夜アニメのノリ。今後に期待。

 

疲れたのでひとまずここまで。

 

S-FRが気になる

かつて大流行し、いまでも一部に熱狂的な支持層をもつ小型FRスポーツカー。採算性から近年はめっきり数を減らしているが、東京モーターショーでは支持層へのアピールとして毎回どこかしらのメーカーからコンセプトモデルの出展があるのがお約束だ。

……もっともコンセプト以降、決して量産化へは進まないことまで含めて『お約束』なわけだが。

いよいよ来週末に控えた東京モーターショー2015でも、やはりお約束通り、小型FRスポーツの出展があった。トヨタより出展される「S-FR」だ。

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だがこの「S-FR」、これまで登場した『お約束コンセプトモデル』たちと比較すると、なんか微妙に毛色が違うように見える。

具体的には、ショーモデル特有の「色気」が感じられない。
まるで量産モデルのような現実味を帯びたモデルになっているのだ。

それは、「内装」と「ホイール」に特に顕著に表れている。

まず内装だが、ショーモデルにしては不自然なまでに現実的だ。
普通、ショーモデルの内装と言ったらスイッチ類が全廃されたツルツルのダッシュボードや、見た目重点のモノフォルムシートなど、SF感あふれる(実現味のない)デザインがなされる場合が多い。参考として、東京モーターショー2013でニッサンから出展されたお約束モデル、IDx FREEFLOWの内装を以下に示す。

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実にかっこいいが、実現性は皆無と言っていい。

これに対し、S-FRの内装はびっくりするぐらい現実味がある。ダッシュボードにはエアコンの操作スイッチやハザードなどが我が物顔で並んでいるし、ハンドル奥にはスタータースイッチが見える。シートだってごく普通のバケットタイプだ。チープ感すら覚えるその内装は、決してショーモデルのそれではない。

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次にホイール。小さい。ものすごく小さい。

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ショーモデルのホイールと言ったら20インチオーバーが既に当たり前だ。だというのに、写真を見る限りS-FRのホイールはせいぜい16、17インチといったところ。ましてや、締結ボルトが4穴である。普通車だってスポーツカーなら5穴が当たり前のご時世に、ショーモデルでこれはいくらなんでも色気がなさすぎる。なんか裏を感じずにはいられない。

ここまで書いてきてふと思った。デジャブだ。
「色気がないホイール」…最近、同じような事を思ったイベントがあったような…。

 

そうだ、新型ロードスターだ!

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今年の5月、マツダの新型のNDロードスターが発表されたとき、まったくおんなじことを思ったのだ。

「どうせまた、大きくなるんでしょ…?」といった不安を裏切り、コンパクトな姿で登場した新型ロードスター。とくに驚いたのがそのホイールの小ささで、先代NCロードスターより一回り小さい16×6.5Jインチというサイズ(しかも4穴)を履いて登場した。
営業面での商品力を考えればインチダウンはとても勇気のいる決断だっただろうに、それでも16インチにこだわり、あまつさえ4穴を選択したマツダの判断には感服した。マツダの開発陣は、重いホイールは「Fan to drive」にとって害悪以外の何物でもないことをよく理解してくれているのだ。色気よりも、性能。なんともマツダらしい判断で、本当に自動車が好きな開発陣が作ってくれたのだということを実感した出来事だった。

 

話をS-FRに戻す。なにが言いたいかというと、これロードスターの兄弟車じゃないかということだ。

今年5月、マツダトヨタは協力関係を締結した。その内容は具体的には示されなかったが、よりよいものづくりのために、両者の経営資源を共有して使用すると報じられていた。つまり、トヨタロードスターコンポーネントを使用して、小型FRスポーツカー「S-FR」を作る可能性は十分あるということじゃないのか?

 

そう思って改めてS-FRの写真を見てみると、似てる。なんで今まで気が付かなかったのか不思議なくらい、ロードスターに似てるのだ

まず内装、エアコンルーバーの形がまんまロードスター。シフト、ハンドブレーキの相対的な位置もロードスターのそれに近い。

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次に外装に目を向けると、Aピラーがロードスターにそっくりだ。

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↑S-FRのAピラー

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ロードスターのAピラー


また、サイドから見た場合、フロントアクスルからドア後端までのプロポーション(フロントアクスルに対するAピラーおよびドアの位置関係)がロードスターと重なるのが分かる。逆に、ドア後端からリアアクスルまでの距離はロードスターと比較して長めである。ここで、発表されているS-FRのホイールベースを見てみると2480㎜とされている。ロードスターのそれと比較して170㎜長い。察するに、このドア後端からリアアクスルまでのエリアを延長して、もともと2座オープンのロードスターを2+2クーペに作り変えるつもりなんじゃなかろうか。

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ここまでは、あくまで私の主観で似ている、と言っているだけだ。
ひとによっては似てない、というひともいるだろうし、S-FRがロードスターの兄弟車だというのは想像の域を出るものではない。

しかし、さらに詳しく写真を見ているうちにひとつ、重大なことを発見した。
以下の写真はS-FRの内装の全景を写した写真において、ハンドルの下、つまりドライバーのフットスペースを拡大したものだ。

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…おわかりいただけただろうか?


明るさを調整して、もう一度ご覧いただこう。

 

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オルガン式のアクセルペダルが見える。


確定だ。今現在、わざわざ小径4穴ホイール履いたオルガン式ペダルのFRなんて、世界中探してもロードスターしかいない。そして、そんな偏屈な設計をトヨタが独自に行うとは考えられない。これはもう、断言してもいいだろう。S-FRはロードスターの兄弟車だ。ここにきて、ただの『お約束』のショーモデルだと思っていたS-FRが、にわかに現実味を帯びたモデルに変貌した。これは、モーターショーでのさらなるアナウンスに期待せずにはいられなくなってきた。楽しみが増えて、今からワクワクしている。


スバルと協力して86を作り上げたトヨタが、今度はマツダと協力してS-FRを作る。自動車ファンとしてはなんとも胸の躍る話じゃないか。最近の車はつまらないといわれるようになって久しいこのごろ、世界のトップメーカーたるトヨタがまたスポーツカーを出してくれるのなら、それがカンフル剤になるかもしれない。また、昔のようにたくさんのスポーツカーが作られるになるかもしれない。

そんな妄想をしながら、モーターショーを、待つ。